神田橋條治の精神科診察室、読んだメモ
・相手の「情報提供力を育成」することが、外来診察の根幹となる。こちらがいちいち聞かなくても情報を提供してくれる雰囲気を育む
・忖度を投げてみて、こちらの忖度にぴたっと波長を合わせて来る人とそうでない人がいる。忖度に応じられない場合、合わなかった事態をスルーしたり、忖度に戸惑ったりする反応が帰ってくる。そのばあい発達障害系を疑う
・こちらが投げかけた忖度への反応で、相手の裏に流れている「理解の状態」を推察することは複雑な作業。
・こちらの意図が読めない場合「クリアな情報で話を進めていかないと、この人の脳がくたびれるだろう」とコミュニケーションの水準を決める。明確に、数字を使って聞いたりなんでも言葉にしていく。
・出会ったとき、脳に余裕があるかないかを見ている。受動的な振る舞いか、能動的な振る舞いか。
・双極性障害は、忖度に応じた会話ができる
・投げかけた親しみがポジティブに受け取られるならば、「接近」に親和性があると判断。接近されることに警戒や抵抗感がないなら、愛着障害のことは考えなくてもいいだろうと考える。
・接近しすぎるか・程よいかは、親しみを投げかけた時点で分かる
・うつ病はまず能力が下がり、次に気分が下がる。身体が動かなくなったり頭が働かなくなったり。双極性障害は逆でまず気分が滅入りなにもできない感情になる。
・なのでうつ病の人は、診察室に入ってきてまず辺りを見回し観察するという能力が落ちてるから、もしするならおやっと思わなければならない。
・困ったねえという雰囲気(指標)をだせば、相手から助け舟をだしてくれるセンスが双極性の方には多い。
・せねばならない、のような窮屈感は双極性の方にはできるだけ少ない方がいい
・相手がこちらに眼差しを集中している場合、愛着障害の接近するためか、統合失調症の防御のためのもの、二つある。
・接近するための、すがりつくような目線を感じたら「ぽとりぽとりと発する先から落ちてゆくような声の調子で訊ねる。静かに、穏やかに」
・愛着的な「投げかけ」や「場」を提示すると、愛着障害の人はそれに飛びつく。接近したり疑ったり。
本人に直接触れる質問はしないまま、「私はサポートの意志がありますよ」と見せる
・「これでいつか試して、報告してみてよ」という声かけをすることで、報告するために観察する状況になったとき一緒にしている雰囲気が本人の中に立ち上がる
・幼稚園で得意だったことは、今でも得意。眠っていても眠っているだけ
・解離してそうだなと思ったら、「あなたは何か言い残したことがあると思うから、それは今度紙に書いて持ってきてくれるといいよね」と伝えることで、解離しなくてもいいんだよというメッセージを送る。
・あまり解離を使わなくても生きていける状態にしたいため、診察室という小さな場所で、解離を使わなくても済む関係が一つでも出来れば、その部分が全体に波及してゆく。それがいつかは膨らみ治療の最終目標へと到達する期待を込めて小さなところから始める(フラクタル)
・解離は、まず情報と自分との連絡が絶たれていて、解離がゆるんでくると情報と自分との繋がりが出てくる。そのあとその情報を他者(社会)に開示するかの選択を行えるかが最終目標
・「自閉の利用」、対人関係を薄くさせる、「意識なしに壁を作る」という複雑なメカニズムが壊れてしまってただただ筒抜けになっているから、社会に対して「閉ざす」ことを練習させる、「思ってることを言わない」ことを練習させる。
・「解離は必要ない」というメッセージは、もう無意識の防御はいらない、意識的な防御に変えていきましょうということ
・解離を解くことを目的にしてはいけいない、破滅してしまう可能性があるな
・愛着障害の人は、「もう長いの?」と聞かれたらその音声には飛びつくが内容はスルーする。うつ病のひとは「もう長いの?」と聞かれたら、その内容に飛びつく。「ええ、もう5年です」というふうに。
・うつ病、身体機能の低下、生命体としての機能の低下、だから「寒さに弱くなりましたか?」と聞くことにも繋がる。本来ある回復能力が働かなくなってることを想定している。「ストレスが蓄積した結果、脳と身体が持たなくなったのだろうと思います。いかに休むかが大切です」
内因性のうつなので、外部環境の具体的な原因探しよらも「今あなたの対処能力が落ちてるんですよ」と説明したほうが相手にとって分かりやすい。
しかし身体からのアプローチを目指すため、身体からの病を見落とさないように
(人間ドックで何か引っかかりましたか?」とか聞くことも大切
・「仕事は生活のためにして、別に人生のための活動を作りますしょうね」という助言
・負けた状況を許されたかどうか
・「アルコールを飲む」から「お酒を楽しむ」への移行をすすめる
・「「どんな時に飲むのか、飲むとどんなふうになるのか」をチェックして、自分で研究して教えてください」
並行して
「一番気持ちいいのは、どのお酒を飲んだときか?」も研究してもらう
・「これは対処行動だと、何かの役に立ってるからやめられないんだと思うように私はしているんですが、それでいいかな」
・常に自由裁量権はあなたにある言い方をする。束縛しない言い方
・圧迫感がなく、解放感がある場を作ろうとして、冗談など言える雰囲気があるとよい。
・人間でない場面の選択能力が保たれているかどうか
・援助がスタート、援助関係を作ることから始まる。「どんな援助が効果的で、さしあたり安心感を与えられるだろうか
・「いつからですか」「大分つらそうですね」
・半信半疑であれば終わらせ、へーとなるようならやらせてみる
(これは相手とこちらの関係性を示す
・「来週までそれでやってみるかい?」と誘う
・「なにか自分なりにこうしたら楽だということはないの?」
「それをしたら幾らか楽になるの?」
・
「手に汗が出るのは、緊張性発汗というんだよ」
「手に汗が出てるのは、緊張しているからだよね」
この二つを味わってみる。前者は客観的事実の味わいがあり、後者は内省領域・自己指摘なので悪い結果になる。
・人それぞれ気質を持ち、環境に適応できなくなると病として現れる。適応障害的な要素へ対処することと、自分の気質への理解と深めることへ促すのが神田橋流
・立ち入らない質問や間接的な情報だけでも、気質を把握できる。
・ハイタッチが好きかどうか。好きなら発達障害、統合失調症のひとは好きではない。関係ができることに緊張があるので、仕方なくさせられている感じ。ため息。
・その人の分に応じて、その人の特徴を膨らませてゆく指導。「それならこんな方法もあるよ」、資質を活かして無理を求めない。
・援助が的確であったかどうかの指標は「気持ちがいい」かであり、反応全体が気持ちがいいならばその成り行きに任せて良い